最新農業
スターウォーズのセットと見まがうような空間!ずらりと並んだトンガリ屋根のハウスはこんなふうに中が繋がって整然とした廊下が広がっていました。
いざ、イチゴ栽培室へ!
一体、中はどんな風になっているのでしょうか。
うわぁ、広い!
でもって、明る〜い!!
「このスペースだけで約24アールあります。晴れるととっても明るいですね」と上田さん。
「植物工場と呼ばれるものにはおおまかに2種類あって、ひとつは“閉鎖型”といってLEDライトなどを使って栽培する方法。もうひとつは、こちらのような“太陽光利用型”の植物工場です」
シーズンは11月〜4月にかけて。この日は朝8時半から地元の主婦の方などおよそ10人で収穫を行っていました。
『高設ベンチを使った養液栽培』ときいてきましたが、なんだか土のようなものが見えます。これは一体…?
「これはヤシ殻です。椰子の繊維なので、土ではありません。このグレーの管に養液が入っていて、全体に行き渡らせるんです」
土ではなく、なぜヤシ殻を使うのでしょうか。
「必要な栄養分は養液で管理したいんです。例えば土であれば、ここの土とあちらの土では中身が違う、という可能性がありますよね。我々が関与しない影響を排除するためにヤシ殻を使っています」
へ〜!これまでの取材とは全く違う視点に新鮮な驚きです。
ところでこの茶色の管は??
「これですか?温水が通っているんですよ。イチゴのための局所暖房ですね」
なんと! 暑過ぎる時は冷水が通るそうです。
「ハウス栽培では暖房費が一番コストがかかります。ハウスの中全体をあたためるのは大変ですが、株の付近だけあたたかければイチゴは快適ですから」
そのとき…
「わ、なんですかこれ!?」とIカメラマン。
足下のビニール袋が急に膨らみ始めました。
「あぁ!これも暖房なんですよ。温風が通っているんです。温度が下がればコンピューターが自動的に調整する仕組みになっているんです」
なんと!
このイチゴハウスでは温度や湿度だけでなく、二酸化炭素の量なども1台のコンピューターで管理し、自動的に供給されるそうなんです。
まさにハイテク農業です。
「植物が光合成するためには二酸化炭素が必要ですよね。植物が光合成したいタイミングに欲しい量だけを出すんです。夜や雨の日は光合成をしないので出しません」
ハウスの天井もコンピューターが制御し、自動的に開いたり閉じたりするそうです。
「普通の農家さんはタイマー設定するなど半分手作業でやってるんですけど、こちらではこの1台のコンピューターがやっています」
驚きを隠せない取材班ですが、譲れないチェックポイントはやっぱり味!
ここは厳しく評価していきたいと思います。
教えていただいたように、人差し指と中指の間に茎をいれて引くと、ぽろり!
簡単に収穫できました。
“もういっこ”という品種。さあ、どんな味なのでしょうか。
いざ、実食!
お、い、し、い〜!
甘くてとってもジューシーです!
“やっぱり味は路地栽培にはかなわないんじゃ…”という予想はあっさりと裏切られました。
「おいしい理由はね、“熟している”からなんですよ」と上田さん。
「普通の農家さんではここまで熟すのを待たずに収穫してしまうんです」
え、どういうこと?
「通常の卸ルートをとるとスーパーで売られるまでどうしても3〜4日はかかります。イチゴは追熟(収穫後、甘みが増すこと)はしない作物なので、収穫した時点で甘さが決まります。そこでうちでは翌日に店頭に並ぶ販売ルートを独自に開拓しました。しっかり熟してから収穫するのでおいしいイチゴをお届けできる。というわけです」と上田さんニッコリ。
なるほど。おいしさは“距離”に深い関係がある。エピソード1(あま〜いニンジンのヒミツ)でも教えてもらいました。
さて、この高設ベンチを使った養液栽培。
イチゴが腰の高さに実っているので、とっても収穫がしやすく効率的です。
「はい。このあたりの農家はみんなこの方式です。
でも、この姿は震災後に作られた新しいものなんですよ」と上田さん。
続いてはイチゴ産地を守ったストーリー。
起死回生の取組みにフォーカスします。
山元町出身・ITベンチャーの経営者だった岩佐大輝氏が、東日本大震災後に設立。
山元町産のイチゴをナショナルブランドに、そして東北を世界的な先端園芸の集積基地に育てることをミッションに掲げ躍進中。