農家の生き方
せっかく「柑橘天国・愛媛県」に来たのだからと、生産現場の取材に行ってみることに。
向かうは松山から南下すること約2時間の宇和島・そして西予市です。
取材は明日にし、この日は宿泊することに。
農家さんが営む民宿。手作り野菜の夕食が評判良く、楽しみです。
(看板犬の小春ちゃんがお出迎え。誰にでもなつく宿のアイドル)
出てきたのは山菜や自家製野菜たっぷりのメニュー。きれいな水にしか住まないというニジマスも。野菜の味が濃くてなんともおいしい!この調子だと柑橘も相当おいしいはず。
期待が高まります。
空気が澄んでいて、辺りからは何も聞こえません。
この日は月が明るい夜でしたが星がキラキラ。その勢いにまかせて、苦手な椎茸もパクリ。
…おいしかった。
翌朝6時、元気のいい「コケコッコーッ!」に起こされます。二度寝を試みるもまるで見透かされたように「コケコッコーッ!コケコッコーッッ!」
せっかく早起きをしたので、昨夜克服したばかりの椎茸畑に連れていってもらいました。
(一面の椎茸畑。すごーい!ここは小春ちゃんの散歩コース)
朝ご飯用にお弁当を作ってもらい、いよいよ、出発です。
やってきたのは「無茶々園」という西予市の明浜町・狩浜という地区の農家の方が中心に立ち上げた団体の集荷場。
迎えてくださったのは事務局の平野さんです。
よろしくお願いします!
およそ70軒の柑橘農家の集まりの無茶々園。
生産量は年間2000トンにおよび、全国に出荷されているそうです。
いわば民間の農協のような団体です。
特徴はなんといっても、有機栽培や農薬をあまり使わない栽培にこだわっていること。
「有機栽培なので外見は良くないですね。ピカピカしていないんです。でも味には全く問題ありません。そのあたりはご理解いただきながらお客様にご利用いただいています」
無茶々園の歴史はなんと40年に及ぶのだとか。
今だと有機栽培や無農薬の野菜は都会で人気ですが、40年前というのは驚きです。
(写真提供:無茶々園)
「その頃からいた人に話をきくと、ちょうど40年前というと、農薬の問題が取り沙汰されていた時代だったようです。有名な本だと『沈黙の春』(レイチェル・カーソン)とか。日本ではちょうどその頃、有吉佐和子さんの『複合汚染』も話題になっていたそうです」
「農業のことでも環境のことを考えなくてはいけない。そういう時代に生きた20〜30代の農業後継者の若手らがひとつの畑を借りて実験的に取り組んだのが始まりだそうです。お寺の住職に借りた、その小さな実験園の名前が無茶々園。それが今のグループの名前になったんです」
(写真提供:無茶々園)
「とくにこの地域は海と畑が近いので、農薬を使うとすぐに海に行ってしまう。そういう環境も大きかったのではないでしょうか」
無茶々園は “無農薬、無化学肥料栽培なんて無茶なことかもしれないが、そこは無欲になって、無茶苦茶に頑張ってみようや” という意味を込めたそうです。
(写真提供:無茶々園)
「そのうち何人かが自分のとこの畑でも有機栽培をやってみようか、と。次第に生産者の人数も増えて、都会の方でも買っていただけるグループや個人が見つかっていって、広がっていったそうです」
(写真提供:無茶々園)
なるほど。深い歴史に納得しきりです。
でも。
ここはやっぱり「おいしいのヒミツ」班! お味がとっても気になります。
「ははは。味もね、おいしいと言っていただけることが多いんです。肥料の違いかなぁ? 是非、食べてみてください」
そこで出会ったのは、柑橘大国・愛媛の底力、ミラクルおいしい世界。
ミカンの季節が終わったと思っているあなた。
日本が誇る柑橘シーズンはまだまだですぞ!
愛媛県西予市明浜町狩浜の柑橘農家が中心の農家集団。
1974年に農業後継者の若者が15アールの伊予柑園を借り、無農薬・無化学肥料での栽培に挑んだことが起源。
現在約70の農家が参画し、全国に有機栽培・無農薬、減農薬にこだわった柑橘を届けている。
看板犬の小春ちゃんがお出迎えしてくれる民宿。奥さんの手料理が名物。作った野菜の収穫や山菜採りなどの体験も人気。
愛媛県北宇和郡鬼北町川上1156