おしえて先生
菅原教授が解明し、今大きな話題を集めているのが愛媛の名産「温州みかん」の機能性です。
「5〜6年前にとある企業さんから、みかんをジュースにした後にどうしても皮が廃棄物として大量に出てくるのでどうにか有効活用したい、と相談を受けたんです。そこから皮を調べはじめて、どうやら花粉症に効果があると分かり始めたのが3年前です」
世の中には、春の訪れを待ち望む人と、恨めしく憂鬱に過ごす人。この2種類の人がいるようですが、その違いは一体どこにあるのでしょうか。
「その違いはですね、花粉症を引き起こす、とっかかりとなるタンパク質を持っているかどうかなんです。花粉症の人は花粉に反応するタンパク質・IgEを持っているんです」
「血液中の濃度が、ある一定以上になると症状が出ちゃうし、濃度が低ければ症状は出ない。花粉症かどうかは、花粉と反応するIgEを、リンパ球という種類の白血球がどれくらい作っちゃっているかが大きな要因です」
先生によると、これが最初のステップ。この時点ではまだ、花粉症の症状は出ません。
取材班の勝手なイメージでは、例えば、世の中にいる、涙もろい人と涙もろくない2種類の人。
ふだん彼らはそれぞれ普通に暮らしていますよね。ところが…
「そのIgEが別の白血球にくっついちゃうんですね。そこに目や鼻から花粉が体に入っちゃうと、反応がおこって、ヒスタミンを放出してしまうんです」
ヒスタミンとは鼻水やくしゃみの原因となる物質です。
ここで再び、取材班の勝手な妄想がふくらみます。
涙もろい人が「忠犬ハチ公」を見たような状態かしらん。涙や鼻水が止めどなく流れて…
これが「南極物語」なら、もうどうしようもありません。
(監修:愛媛大学 菅原卓也教授)
「そこで、登場なのがミカンの皮なんです」
え?
「IgEをたくさん持っていたとしても、細胞が受ける刺激を弱めてヒスタミンの放出を抑えてやれば症状が緩和されます。ミカンの皮にあるノビレチンという成分が刺激をブロックしているんです」
つまり、映画館にいたとしても真っ黒のサングラスをして見ていないようなもの??
「さらに我々の研究によると、ヨーグルトも同じような効果を持っています。ミカンの皮、ヨーグルト、単独でも効くけれど、刺激をブロックしている箇所が違うので組み合わせた方がはるかに効くというデータが出たんです」
(資料提供:愛媛大学 菅原卓也教授)
「それぞれ違うところでブロックするので、結果的に情報が細胞の中で伝わらなくなってヒスタミンの放出が減るということですね」
例えるなら、サングラスと耳栓をしているようなもの?これなら涙もろい人でもいけるかも!
ところが、ここで先生から衝撃の発言。
「ノビレチンなんですけど、皮と実だと圧倒的に皮の方に多くあります。温州みかんだとほぼ皮にしかない。ミカンジュースを飲んでもノビレチンは摂れないです。皮ごと食べないとね」
それならば、と実食です。
パクッ。
「う〜ん…」
想像以上のえぐみです。おいしいのヒミツ史上はじめての辛い食べリポート。
「もちろん個人差はあるんですが、効果が期待できるのは大体1日0.5ミリグラムのノビレチン。ミカンの皮にして1〜2個。ヨーグルトは150ccくらいかな。
マウスの実験だと症状を引き起こす1時間前に飲めば効くので人間でも1〜2時間前に飲めば効くと思います」
それにしたって、皮1〜2個とヨーグルトを毎朝食べるのは至難の業です。
「ああ、でも、それだけしか食べてはいけないというわけではないんです。もちろん果肉も一緒に食べてもいいんです」
それならば!ということで “ミカンまるごと” と “ヨーグルト” をハンドブレンダーにかけてスムージーにしてみることに。
しっかり皮もくだけたので見た目も悪くありません。
これならおいしそう。
うん!うん!
想像以上においしい!これなら毎日飲んでも無理はなさそう。
先生によると白いわたの部分には食物繊維がたっぷり。果肉には当然ビタミンも。
まるごと食べるって、なんだか美容にも良さそうなキーワードがゴロゴロついてきます。
「果皮というのは中の実を守るためにいろんな機能性をもっていることが多いんですね。ただ、皮には農薬が残留している可能性がありますから、しっかり洗って食べるとか、なるべく無農薬のものを選ぶなど自己防衛をすることをおすすめします」
それならば!と…
柑橘天国・愛媛県の、こだわり農家に突撃してみることに!
そこで出会ったのは、“山と海と人を守る” おいしい物語でした。
(写真提供:無茶々園)
食品の機能性をヒトレベルにおいて解明し健康維持に寄与することをミッションに掲げた愛媛大学食品健康科学研究センターのセンター長であり、食品機能学の研究者。
食品機能学とは、食べ物に含まれる成分が動物細胞や実験動物、さらにはヒトの健康にどう影響するかを調べる学問分野。
食品によってヒト細胞の機能が高まった場合、機能性食品の開発に繋がることから、産官学の分野からいま最も熱い注目を集める一人。