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みかん研究所中田所長と育つ枝を見上げる取材班

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Episode7-5

 新品種開発

生めよ!増やせよ!
おいしいミカンが実るその日まで

農林水産研究所果樹研究センターみかん研究所/ 中田 治人 所長

農林水産研究所果樹研究センターみかん研究所
/ 中田 治人 所長

みかん研究所には、4ヘクタールもの畑があります。
「みかん研究所の目的は2つ。ひとつは、生産現場の農家さんのために栽培技術の開発。つまり柑橘をよりたくさん、よりおいしいものをどう作るかの研究です。
 もうひとつは新しい柑橘の品種を作りだすことです。」

みかん研究所の研究内容についてはなす中田所長

「どうぞ。ここはね、新しい柑橘の保育園です」
 え?保育園?

「柑橘の保育園」というハウスに入って行く所長と取材班

「はい。新しい品種を作るためのね。
 花が咲く時期にお母さんになる品種のめしべにお父さんになる品種の花粉をとってきて交配してあげるんです。すると冬に実がなる。その実に種が入っていると “お子さんが生まれた” ということになるんです」

30センチ前後に伸びた苗がたくさん並んでいます

「ここにあるのは、その種から育てて1〜2歳になったとこですね。なので保育園(笑)」
 なるほど! これを大切に育てていくわけですね。

並んだ苗には全てタグがついています

(お父さんとなった木とお母さんになった木が記されている)

「ひとつの果実のなかに複数の種があると、ひとつひとつ個性が違う。人間でいえば同じ両親から生まれた兄弟でも一人一人個性が違うように。
 ですので原則としてはとれた種は全部まいて育てます。1年間で1,000粒くらいになります。」
え、全部まくんですか? それも1,000粒!?

たわわになる柑橘。広大な敷地に柑橘がたくさん!

(みかん研究所は多種多様な柑橘の宝庫。まるで桃源郷!)

「はい。すごいでしょう? それでこの状態で2〜3年育てたところで接ぎ木します。保育園から小学校へあげるんです」

「小学校」にあたる接ぎ木についてしゃがみ込んで説明する中田所長

「接ぎ木というのは、もともとあるミカンの木の枝を切って、皮のところをはいで木質との間の形成層に新種の柑橘を差すんです」
え?それだけで養分がいくんですか?
「はい。差し込んでテープで固定するんです。1本の木に複数の新種を接ぎ木します。大きな木だと20本くらい接ぎ木できたりするんですよ。こっちの枝には伊予柑、こっちにオレンジ、こっちにすだち、みたいにね。柑橘であれば種が違っていても大丈夫なんですよ」

接ぎ木のテープ部分を指差す所長。番号が記されています。

へ〜、そんなことが!まるで夢のような木です。
「この状態で2〜3年すると実がなるんです。今の技術だと、実をつけたものを調べないと特徴が分からないんです。交配してから初めて実をつけるまで5〜6年かかります」

実をつけ始めた頃の接ぎ木たちの下で話を聞く取材班

「いよいよ実がついたら、調べます。形はいいけど、食べるとまずいとか酸っぱいとか、いろいろあります。皮が簡単に手でむけて食べられるかどうかも重要なポイント」
聞けば聞くほどチェック項目は多く、まるでみかん大学の難関試験のよう。

たわわに実った木の善し悪しを教えてくれる所長と感心するばかりの取材班

(やっぱりたくさん実をつけなくちゃ、ね)

味の1次試験が合格すれば、今度は1本まるまるその木にするように接ぎ木するんです。たくさん実をつけるか、とか育てやすいか、とか。農家さんの立場になって試験をします。それをクリアすると最終試験へと…。 合格、つまり品種登録までには交配から15〜20年かかるんですよ」

甘平の木の前に設置された「甘平」について解説してあるパネル。

みかん研究所が品種として確立させた “甘平”。 これも16年の歳月がかかりました。
「愛媛県では新種の開発を40年し続けています。1年に1,000本ですから、4万本やってきた計算になりますね。でも品種として確立したのは、8つだけなんです」
え、たったの8つ!?

とってもおいしい、ミカンまるごとスムージー。

(一房が大きくてジューシーな甘平)
(温州みかんの良さを最大限伸ばしたようなおいしさに感激!)

「愛媛県は温州みかんの生産量では和歌山県に抜かれてしまった。でも柑橘類のトータルの生産量も種類の多さも堂々の日本一です。これは誇りだし、これからも守っていきます」

この先の愛媛柑橘の高い目標と誇りについて語る中田所長

“おいしい柑橘” にかけるすさまじい努力と高い目標。
日本最大の産地のすごみに、ただただ感心です。

機能があって、歴史があって、そして未来がある。

でも、なによりも素晴らしいのはとびきり「おいしい」こと!

愛媛の熱意と歴史がいっぱい詰まった、おいしいミカン!

さぁ、あなたも頬張ってみませんか?

愛媛県 農林水産研究所
果樹研究センター
みかん研究所

昭和8年に設置された試験場。温州みかんをはじめ愛媛県の柑橘類研究の中核施設。育種・栽培研究だけにとどまらず、新品種の開発も精力的に行う。
みかん研究所発祥の柑橘は、現在市場で高い評価を受けるなどまさにヒットメーカー。

http://www.pref.ehime.jp/h35120/kajyunanyo/about/documents/mikankenleaflet130523.pdf
(みかん研究所概要・品種一覧のPDF)

みかん研究所の外観。みかん色の屋根の上にはみかんのオブジェ。

おいしいのヒミツ