ヒミツの解明
(週末には開店前から長〜い行列ができる人気店)
極上パンケーキが食べられるのは、鳥取県八頭郡の大江ノ郷自然牧場が経営するココガーデンというカフェ。なんと養鶏所直営のスイーツショップなんです。
迎えて下さったのは代表の小原利一郎さんです。
よろしくお願いします!
小原さんは現在50歳。29歳のときにサラリーマンから転身。都会から戻り、たった一人で養鶏を始めたそうです。
「さぁ、早速、ご案内しますよ!」と小原さん。実は今回、特別に養鶏場を見せていただけるんです。
カフェから車で数十分。
何やらワーワーという声がきこえてきました。周りを切り裂くような騒音ではなく柔らかで、なんとなく、かわいい声の合唱です。
ところが、鶏舎に近づくと、ピタリと合唱が消えました。
「ハハハ、誰が来たんだろうと、みんな耳をそばだてているんだと思いますよ。とにかくウチのコッコ達は好奇心が旺盛ですから」と小原さん。
「さぁ、どうぞ」と小原さん。 すると…
わぁ、みんながこっちを見ている!
中にいたのは、まだ若い雌鶏たち。鶏舎で平飼いされています。
「なぁに?なぁに?っていう好奇心の顔ですよ(笑)」と小原さん。
私たちの存在に少し慣れてきたのか、しばらくするとまたワーワーというおしゃべりが始まりました。まるで女子高生みたい!とみんなで笑ってしまいました。
「トサカの色を見て下さい。これがコッコたちの健康のバロメーターなんです。具合が悪くなっている子はトサカの色がピンクじゃなくて薄い紫だったり白色だったりするんですよ」
へ〜! みんなキレイなピンク色をしています。
鶏舎の中では走ったり、砂浴びしたりと自由自在。想像していた嫌な匂いは全くしません。
「うちは、鋸屑(材木のくず)を下に敷いているんです。その鋸屑で砂浴びしていますよね。あれは鶏の本能なんですね、でもゲージ飼いだとそれは絶対できない。だからちゃんと砂浴びができる環境が必要だと自分は思っているんです」
(とにかく優しく扱う小原さん。鶏たちが警戒したり怖がって逃げるようなことは全くありません)
(とにかく優しく扱う小原さん)
(鶏たちが警戒したり怖がって逃げるようなことは全くありません)
「実はウチの実家は養鶏をやっていたんです。平飼いではなくゲージ飼いだったんですが。将来を考えたときに、自分の人生をこのゲージ飼いにかけるのはどうかな、というのがあって、それで1回サラリーマンになりました」
ところが、都会でサラリーマンをする中で次第に気持ちが変わってきたといいます。
「インターネットの通販で成功した人の記事を見ると、自分で食べていくくらいなら平飼いができるかな、と(笑)。すごく甘い考えで始めたんです。でも、フタをあけてみると全然ダメでした。」
(起業当時の小原さん。一人で1個ずつタマゴを拭いて出荷していた)
(起業当時の小原さん)
(一人で1個ずつタマゴを拭いて出荷していた)
「平飼いっていうのは基本的にコストがかかるんですよ。同じ敷地でもゲージなら立体的にするので10倍くらい余分に飼えるんです。ゲージならエサも自動的にあげられるし、タマゴもコンベアで出すので人件費もかからない。だけど、平飼いは土地も人手もかかる。しかも、ウチはエサに合成添加物はやらない、とすごくこだわっていて、そこにもコストがかかるんです」
確かに。人間でもオーガニック食にこだわるとお金がかかります。
「ははは、そうですよね。で、コストがかかった分は値段にのせないといけない。けど、値段を高くするとお客さんに買っていただけない。そういう悪循環に陥ってしまったんです」
平飼いを小原さんが始めたのは21年前。確かに消費者も今ほど食の安心安全に敏感ではなかったはず。この難しい状況をどうやって打開したのでしょうか。
「売れなくてとうとうタマゴを捨てないといけなくなっちゃったんです。それで、捨てるぐらいだったら無料で食べてもらおうということで友人や親戚に食べてもらう人を紹介してもらったんです。毎週1回来ますから、というふうに約束して。最初は “こんな高いタマゴ売れないよ” とお叱りを受けていたんですが、次第に “食べたらおいしかった” と口コミが広がるようになって…」
(健康な体つきに成長しているかどうかを時折触ってチェックするという小原さん)
(乱暴に扱わないので鶏たちもおとなしく抱っこされています)
こうしてコツコツと一歩ずつファンを増やしていった小原さん。
「甘くはなかったですけど。ただ、高くても買っていただける方が地元にいてくださった。お客さんに育てていただいたと本当に感謝しています」
「今でも砂浴びをしたり日光浴をするコッコを見るとホッとします。なんかねぇ、“これだ!” と思うんですよ。これが見たくて自分は養鶏をしているんだ、と思い出させてくれる瞬間ですね」とニッコリ笑う小原さん。
鶏たちを“コッコ”と呼んでいるところにもなんだか愛情を感じホッコリします。
小原さんの平飼いにかける想い。実はまだまだ奥が深いんです。
おいしい極上タマゴは食べる人だけを幸せにするものではない!
続いては自然とそして地域と共生する養鶏の姿。
あまりに感動してつい、涙がポロリ…
平飼い、即日発送にこだわる養鶏と、卵の味を楽しむスイーツカフェショップを展開。1994年に20代だった小原利一郎氏がたった一人で創業。現在は3万羽の養鶏とスイーツショップでおよそ100人の雇用を地元に生み出している。
自然循環型かつ地域との共生が理念。
こうして生まれたブランドたまご「天美卵」は首都圏はじめ全国にファンをもつ。