生き方
新しい訪問者にすっかり慣れたのか、鶏たちはずらりと並んで何かに夢中。
どうやらご飯の時間のようです。
飼料にも相当なこだわりがあるという大江ノ郷自然牧場の小原代表。
「例えばカルシウムのための貝殻とか、まずコッコに必要な成分というのがあって、それをキチンとあげるというのが絶対です。それから人間が科学的に作ったものは排除。それプラス、やはりおいしいタマゴを作るのは僕たちの使命でもあるので発酵飼料だったり、昆布や鰹節だったりと旨味の多いものを加えています。それと…」
「籾付きのままの玄米。これは飼料用に地元の田んぼで作っているんですよ」
え!エサのために米作りまで?
「はい。近くなので見に行きますか?」
と、いうことで田んぼに連れて行ってもらいました。
やはり、意識の高い大江ノ郷さんの田んぼなら、米も無農薬にこだわっているんでしょうか。
「はい。でも、飼料米はね、そもそも農薬をやる必要があまりないんですよ」
え?どうしてですか?
「だって、コッコに食味が悪いとか文句を言われないですから(笑)」
あ、そうか! と、ここでみんなで大笑い。
現在では5ヘクタールもあるという大江ノ郷自然牧場の飼料米畑ですが、以前は休耕田だったそうです。
「糞とか匂いとかね、やっぱり養鶏というのは近くにあってほしいと思う産業ではないんです。その養鶏場を受け入れて下さった地域にちょっとでも恩返ししたいという気持ちがあって休耕田を利用させてもらっています。それとここは地元の小学生たちと一緒に手植えをして、稲刈りも一緒にしているんですよ」
「春に田植えをする、秋になったら稲刈りをする。それを鶏に与えて、鶏がタマゴを生む。そのタマゴがパンケーキに変わる。命は全部つながっているんだっていうことを子供たちに教えていきたいんです」
「都会の方が何でも揃ってて良いと若いときはみんなそうやって思うんです。自分自身も、一度ふるさとを離れ都会で暮らした。でもここには豊かな自然があることに早くに気づけたからこそ、鳥取にもどって理想の養鶏の仕事ができたんです。
自分たちが暮らした場所を好きになって誇れること。それは絶対彼らの将来にとって良いことだと思っている。たぶんそれがこういうことをする一番の理由かな」
ビジネスを成功させるだけでも大変なのに、地域のことや子供たちの将来まで…
わたし、感動してつい涙がでてしまいました…。
こうした理念は、直営カフェにやってきた子どもたちにもわかりやすいように伝える工夫がなされています。行列の待ち時間の間、真剣に読んでいますね。
「そういえば、ふじわらさん。あれ、食べました?」と小原さん。
「ウチの一押しメニューですよ」え?パンケーキじゃなくて?
(天美卵 たまごかけご飯セット 580円)
「パンケーキもですが(笑)。1日限定30食のタマゴかけご飯!これは是非食べていって下さい」
なんと!なんと!それは、食べずに東京には帰れません。
いただきまーす!
おいしい〜!黄身にコクがあって、白身もぷるぷるです。
小原さんは理想のタマゴの味を「行き過ぎたところのない、本当の意味での自然なタマゴの味」と言っていましたが、納得。黄身も白身もバランスのとれた、おいしいタマゴです。
この味だからこそ、何枚でも食べたくなるおいしいパンケーキができたのだとこれまた納得。
(朝と昼の2回拾い、その日のうちに出荷。翌日にはお客さんのもとに届く)
大江ノ郷自然牧場のタマゴ「天美卵」は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、αリノレン酸などの栄養素が多く確認され、低コレステロールが実現できているとか。
10個入りの1パックで1000円は決して安くはありませんが、全国にファンが多いのもうなずけます。
おいしさのこと、鶏たちのこと、自然のこと、ふるさとの子供たちのこと…。
真摯に向き合う小原さんからたくさんのことを教えていただきました。
そして!おいしいタマゴに出会えたことでムクムクと創作意欲が…。
続いては料理研究家ふじわらみきの簡単おいしいレシピ。
さぁ、始めますよ!
平飼い、即日発送にこだわる養鶏と、卵の味を楽しむスイーツカフェショップを展開。1994年に20代だった小原利一郎氏がたった一人で創業。現在は3万羽の養鶏とスイーツショップでおよそ100人の雇用を地元に生み出している。
自然循環型かつ地域との共生が理念。
こうして生まれたブランドたまご「天美卵」は首都圏はじめ全国にファンをもつ。