おいしい哲学
翌朝。
きれいな朝の陽を撮影しようと早起きして出かけた取材班。
しかし、心ここにあらず。何しろ、朝ごはんは牧場の卵を使ったフレンチトーストなのです。
待ちに待った、朝ごはんです!
南国フルーツのスムージー(パパイヤ・マンゴー・パイナップル・バナナ)と、フレンチトーストに塩パインとマンゴー。カツオだしがしっかりきいたミニトマトのスープも絶品でした。オムレツには手作りケチャップもついています。
ふだんは、グラノーラしか食べないというMさん。誰よりも早くペロリと平らげました。
カナンファームは自然放牧。卵を産むお気に入りの場所は取り合いに
卵は牧場の有精卵です。
幸運にも、卵を産む瞬間に取材班は立ち会えました。
産みたての卵は当然ながらホカホカ!しかし、冷蔵庫に入っている冷たい卵に慣れきっている取材班にとって、頭ではわかっていても体感した温かさは衝撃でした。
「これがニワトリの体温なんですよ。人間よりも温かいですね」と夫の啓示さん。
「このように放し飼いにすると、卵は毎日産みません。運動すると、自然に近くなるので産まなくなるんです」
養鶏も養豚も、利益重視の農業には思えません。
なぜそのような手段をとっているのでしょうか。
「僕は自然農法をやっているけれど、環境活動家でもなんでもないんです。
ただ、大切にしているのは、“継続可能かどうか”という点です。
環境にも人間にも一方的に“相手”に負担を強いるようなことはやりたくない。自然にそったやり方をすれば、結果的に自然にも動物にも人間にも“資産の公平的な分割”につながって、継続可能な農業になると思っています」
取材班もパイナップルもぎを体験
「それと、僕は自分の懐事情があまり良くなかったというのもあります。いかに普通の人が要らないと思うものを資源として活用するかを考えたんです」
コスト削減のために自然の力を借りたところ、極上のおいしさが生まれた、というワケ。
それとね、と啓示さんが続けます。
「経済効率ではなくて、“持続可能”という価値観でやってると、自然とオンリー・ワンになってきたんです」
あぐー豚の価格は少し高め。ですが、ユニークな手法と味わいが評判をよび、指名買いする東京のレストランも増えてきました。直売のみの塩パインも、去年は完売です。
カフェに対しても、妻の英恵さんは同じ考えです。
「那覇にはたくさんホテルがあるし、沖縄にはきれいなリゾートホテルもたくさんある。ここは違うコンセプトにしないと、わざわざ来てもらえない場所だと思うんです」
実は、カフェや客室の壁は農場の赤土。
カフェの飾りもすべてスタッフが海などで拾ってきたもので、何一つ買ってきたものはないといいます。
「農業のあるライフスタイルを体感してもらったり、田舎のコミュニティの窓口でありたいと思っています」という英恵さん。
「都会で暮らしていた時、どうやったら人の心に届く企画書が書けるか、一生懸命がんばっていたんです。できるだけシンプルで楽しくて、美しい企画書を作ろうと…。
でも、ここに来たら、自然そのものがシンプルで楽しくて美しい。ここに来て初めて分かったんです。頭で考えるシンプルと、自然のシンプルは違うんだって。
皆さんも、肩の荷をおろす、じゃないけど時々自然の中に還ってみるのもいいと思いますよ!」
と言って笑いかけられた私たち。
ふだん七転八倒しているのを見透かされたようです。
「また沖縄にいらしてね!」と笑顔で見送られた取材班。
心のふるさとに戻ったような、不思議であたたかな気持ちになったエピソード3の旅でした。
沖縄県国頭郡東村平良にある
農場とカフェ、そして宿泊施設。
オーナーの依田夫妻が循環農業を提唱し、実践。
農園見学ツアーや農業体験ツアーも。
カフェ 11:30〜18:00(木曜定休)
ディナー・宿泊 … 前日までの予約制
http://www.canaan-farm.com